2023年賃貸住宅業界の上半期を振り返る(後編)

2023年賃貸住宅業界の上半期を振り返る

週刊誌やビジネス誌に執筆するライターのA記者と不動産業者向け新聞のB記者、不動産ネットメディアの編集を手掛けるC記者の3名で、2023年の賃貸住宅業界前半のトピックスを語ってもらいました。
業界通ならではのリアルな展望が語られました。

次なる半導体バブルはどこか︕︖

A熊本県菊陽町の賃貸住宅市場がたいへんなことになっているらしい。

B台湾の世界最先端の半導体メーカー、TSMCが菊陽町に巨大な工場を建設中です。
工場といっても 23万㎡以上もあって、福岡 PayPayドームの 3倍以上の大きさ。
2024年の秋には稼働が始まる予定で、現在も大型トラックが昼夜を問わず工事現場に入り込んでいるらしいです。

Aそこで賃貸住宅バブルが発生しているわけだ。

C何しろTSMCやソニー、それに関連するサプライヤーたちだけで 7000~8000人の労働需要が発生していると言われています。しかし、工場の人材採用には苦戦しているとも報じられています。
少しでも良い条件をそろえるため、築 10年以内の物件を社宅として探して欲しいと地元の不動産会社に要求していて、業者も物件確保に苦戦しているようです。
当然、新築需要も活発化していますが、菊陽町と隣の大津町は市街化調整区域が多くて、住宅が建てられる土地自体が少ない。
そのため、2022年には工業用地価格が 31.6%、商業用地価格が 13.6%、住宅用地価格が 7.7%も上昇しています。

A5月の広島サミット前には TSMCやインテル、マイクロンやサムスンなど世界の半導体企業7社のトップが首相官邸に集い、日本を製造・流通の要として重視していく方向が確認された。
マイクロン(アメリカ)が広島工場に 5000億円を投じて最新設備を導入するし、別の半導体メーカーも神奈川県内に工場を稼働する方向で動いていると報じられている。

Cウクライナ情勢が不安定な上に中国の脅威は高まっています。
半導体という産業の要の製造が途切れれば、世界経済は混乱に陥る。
政治、社会ともに安定感のある日本への期待は相対的に高まっています。
日本全国あちこちの自治体が次の半導体バブルの恩恵にあずかろうと期待しているようです。

A半導体工場が招致されれば、既存物件の空室は埋まって新築も建つ。
下半期もどこかで景気の良い話がでるかもしれないね。

分譲値上がりでファミリー賃貸に注目

A東京五輪以降も、コロナ禍や日銀総裁交代などの逆風を乗り越えて金融バブルが続いているな。
そろそろ、変化の兆しはないのかな。

B今年の 1月には、首都圏を中心に賃貸マンション建築を専門とする中堅建築会社が経営破綻しました。
この会社は、5~10階建ての賃貸マンションの開発に熱心に取り組み、投資家には 1棟ごと売り出していました。
売上高は 2015年の約 6億円から、わずか 7年後の 2022年には約 105億円にまで劇的に拡大していました。

C投資用物件を自社で販売するだけでなく、投資家の顧客リストを持つ不動産会社からの請負も増えていましたが、突然の倒産は業界を驚かせています。

A一体、何があったんだ︖

B破産申立書には建築資材の高騰で赤字現場が増えたことが挙げられています。
さらには、退職した幹部社員による架空取引が発覚して、金融機関からの調達条件も悪化したようです。

A建築費は高止まりという感じだ。インフレはまだしばらく続くという声もある。
景気変調の兆しは案外、こういう中堅会社の倒産にあったりするから、意識しておきたいね。

C個人的に気になったのは NHKの看板番組「クローズアップ現代」で放映された地上げの問題です。
立ち退きさせるために、腐った生の魚や肉を使ったり、夜の 11時頃に来て帰らなかったり、現実にやっている場面が生々しく放映されていました。

Aその番組は反響があったらしいね。
首都圏を中心にマンション用地の確保は年々 難しくなってきていて、荒っぽいやり方に手を染める開発業者が増えているのは事実だ。

Bバブルの頃を彷彿とさせるという声もありましたね。確かに今のマンション市場はバブル期を超えたとも言われます。
一方で、バブルの頃は用地を求めて、空き地の多い郊外にどんどん広がっていたけど、今はそこまでいかない。
そのため、既存の住まいを立ち退かせるという方向で先鋭化していく傾向があるのかもしれませんね。

A今のマンションは投資家向けの商品という側面もある。
投資家は土地価格が高くて、資産性のある物件しか目を向けないから、立ち退き圧力が高まるのだろうね。

C投資家が増えすぎて、住みたいのにマンションが買えない人も多いようです。

Bその分だけ賃貸住宅のニーズは高まっています。
2023年 1~3月期における首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を含む)のファミリー向け賃貸物件の平均賃料は 111,198円(前年比 109.3%)でした。(LIFULL HOMES発表、サイト掲載分)。
ファミリータイプは単身者向けよりも、一坪当たりの賃料が低い傾向にあって敬遠されていましたが、これからは供給も増えるかもしれません。
これは首都圏に限ったことではないかもしれませんね。

Aこの秋はインボイスなどの新しい制度が開始されるし、下半期もいろいろと起こりそうだね。
また、年末に集まろう。

不動産はバブルだろうが不景気だろうが、購入する目的を忘れてはいけないと金子は思います。

この話は投資で買うという目的であれば、それが目的と思うかもしれません。
私が言う目的とは収益性を大事に長期保有なのか、短期で売却して売却益を求めているのかということです。
この場合、元々長期保有で考えていたのに価格の上昇から、安易な予定変更で売却益を求めるようなことは止めましょう!ということです。
こんなこと言っていますが、それで上手くいく人もたくさんいます。

それでも目先の利益だけでなく、自身のライフプランを大事にしましょう。
バブル崩壊の時もそうですがいつの時代も必ずババを引いてしまう人が出てきます。
欲を重視する前に確実なライフプランを起点に運用していくことが、結果的には事業を拡大する近道になるのです。

不動産は水物でとてもこわい商品です。私はそう思っています。
ですから成功するためには失敗をしないことを優先に考えてください。
成功の積み重ねで最後に破綻している人は本当にたくさんいます。

私自身も得をすることよりも損をしないことを大事にしてます。成功することよりも失敗しないことを大事にしています。結果的に小さな成功の積み重ねになり安定した財産へとなっていきます。

大きな成功の裏には常に大きな失敗が潜んでいることを忘れずに不動産投資をしてくださいね。

そんな時にあなたのお役に立てればと思いますので、ファイナンシャルプランナーである金子に相談してください。
現状のプランニングの見直しも含めてアドバイスさせていただきます。

このページの先頭へ戻る