円安で賃貸経営にどんな影響があるのか⁉

円安が続いています

年初の 1 ドル=110 円前後が、10 月以降は 150 円前後で乱高下しています。

専門的な分析はさておいて、円安は日本経済にとってプラス面とマイナス面がありますが
賃貸住宅経営にはどんな影響を及ぼすのでしょうか。

たとえ小さな影響であっても認識しておく必要はあるのではないでしょうか。

物価上昇で入居者の滞納リスク増︖

円安の最も広範囲への影響は物価上昇であり
食品などの生活必需品の値上がりが続いています。

10月の消費者物価指数(生鮮食品は除外)は前年同月を3.6%も上回りました。

3.6%の上昇は消費税率アップを除けば40年8カ月ぶりの水準となっています。

1ドル=150円近くの状況が続いた場合
家計への負担は年間平均8万6000円増という予測もあります。

家計圧迫の影響で外食やアパレルは買い控えが増え
円安による原材料上昇を転化できずに倒産する企業が増加すると
わずかでも家賃滞納リスクが増えることが予想できます。

海外の投資増で不動産を売りやすくなる︖

もう一つ、見逃せない影響は外国人投資家による日本不動産への投資です。

円安に伴って、日本の不動産価格は割安感が増しているようです。

中国・台湾の投資家との取引が多い東京都内の不動産販売会社の代表は
「1月から10月までの間で、日本不動産の海外投資家向けの販売数は2割近く増えている。」
と語っています。

どうやら「日本買い」は加速しそうです。

さらにウクライナや香港などの問題で
独裁的な国家で資産を保有することに対するリスクが
浮き彫りになりつつある影響で安定感のある日本の社会状況に好感を持つ
投資家の動きも背景にあるようです。

日本全体からみると外国人に日本の不動産が買い進められるのはいい状況とは思えませんが
売却を検討している所有者にとってはチャンスといえるのかもしれません。

留学生など外国人入居者動向は不明

日本から海外に留学している学生は
急速な円安で生活費の大幅な値上がりに苦労しているようです。

これから留学予定だった日本人学生は学費を含めた留学費用の総額が
2~3割以上増えてしまった人もいて留学断念者も増加中という
悲しいニュースも増えています。

一方で日本で学びたい外国人留学生は日本に来やすくなるのでしょうか︖

外国人留学生の受け入れに尽力してきた不動産会社の社長によると
「円安で学費や生活費が安くなったことで日本留学を検討する学生が増える可能性はある」
とする一方で
「外国人留学生は母国で留学費を借りて来ている子も少なくない。
日本でアルバイトしてお金を返す予定だったり学校卒業後に日本で就職して仕送りしたいという
計画を立てていたりすればあてが外れることになる」と
今後の予想が難しいと困惑気味です。

留学生は単身者向け物件のターゲットですが
この円安が増加と減少のどちらに影響するかは未知数と言えそうです。

金利上昇ならば変動金利が経営圧迫

円安の原因の一つとされるのが金融緩和策です。

日本は先進国の中でも唯一、大規模な金融緩和策を継続中ですが
一方でアメリカは物価上昇を抑え込むために利上げを繰り返しています。

このため世界中でドルを買う動きが広がり続け
反対に円が売られているという構図です。

日本も金融緩和を止めるべきではないかという意見もありますが
金融政策を決定する日本銀行では
「日本経済は緩やかに回復基調にあるため金利を上げると本格的な景気回復のチャンスを逃してしまう」
と考えて金融緩和を継続したいようです。

専門外の私たちにとっては、どちらの判断が正しいのかは分かりかねますが
今後アメリカに追従して利上げが検討される可能性がゼロとは言い切れません。

万が一にも金利が上げられれば、不動産向けの融資も引き締められることとなり
ここ数年続いた不動産市場の活況にも冷や水が浴びせられることとなりかねません。

さらに変動金利でアパートローンを借りている大家さんは
金利上昇で返済額が増えることになります。

現在、アパートローンは金利優遇を含めて1.5~1.8%くらいが相場とも言われていますが
これが金融機関の店頭にある2%台にまで引き上げられる事態となれば
賃貸経営に大きなマイナスになるでしょう。

住宅ローン固定金利は11月に多くの金融機関で前月比で引き上げとなり
今後の変動金利の動向に懸念を感じさせます。

これから借入をする場合は
固定金利か変動金利かの選択には慎重な検討が必要になりそうです。

その他にも、原材料の多くを輸入に頼る住宅設備は値上げが進みそうです。

設備交換やリフォーム代の上昇は賃貸経営に直に影響しますので
工事を実施すべきかどうか、工事内容と予算について、長期的視野による検討が必要です。

円安が与える賃貸経営への影響については、まだ全体像は見えていません。

 

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